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カチンコ
映画タイトル少年
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タイトルバック 少女達の優しい想いが起こした大事件 タイトルバック
タイトルバック 「フェアリーテイル」 タイトルバック
カチンコ 032 カチンコ
タイトルバック 2011.07.24 タイトルバック
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 子供の頃、よくあった不思議な写真を特集した本などには、ネス湖のネッシーの写真やUFOの写真なんかと一緒に、必ずといっていいほど少女と一緒に妖精が写っている写真が載っていました。他の写真が”言われればそんなようにも見える”程度のものが多かったのに対して、この写真に限ってのそれはあまりにもはっきりし過ぎるくらいのディテールを持っていて、疑いようの無いほどそれは妖精でした。疑問を抱くカテゴリーが違う様にも思えたその写真は、結果的に大人になってもいつも記憶のどこかにありました。

 そんな写真が世界的に有名な写真であることを知ったのは随分と後のこと。それは100年近くも昔の1917年にイギリスで発表され、その真偽を巡り大論争が起こり、やがて世界中を巻き込んで20世紀最大の謎のひとつとも言われるようになったものでした。後に”コティングリー妖精事件”といわれるこの事件。そんな実際に起った事件をもとに映画として作られたのが今回の「フェアリー・テイル」(99年/イギリス)です。

 第一次世界大戦が終わった頃のイギリス。その片田舎コティングリー村の妖精が住むという話が伝わる小川で遊ぶ11歳の少女エルシーと、南アフリカから独りで疎開してきた8歳の少女フランシス。彼女達はそこで本当に妖精と出会います。しかし母親に話しても信じてはくれない。何かを思い立った二人は数日後、父親からカメラを借りてその小川に向かいます。帰って来るなり写真の現像をせがむ彼女達。不思議に感じながらも現像を終えたその写真には紛れも無く妖精が写っていました。喜ぶ子供達。何かのミスか偶然という父親に対して、それを観てしまった母親はその真偽を知りたくて、村にきていた神秘学者のガードナーにその写真を託します。写真を見て驚いたガードナーがロンドンに戻った後にその話を持ちかけたのは、世界的に有名な作家であり、サーの称号をもつイギリスを代表する知識人”アーサー・コナンドイル”でした。彼等は調査の結果、その写真を本物の妖精と断定し、雑誌に発表するのです。”本物の妖精がいた!”この話題はイギリス全土を席巻します。一躍時の人となる二人。しかし、この事件の余波は彼女達の想像を越えていくのです。

 この映画は”この事件の真相はこうだ”という映画ではありません。もともと映画になる随分前、1982年におばあちゃんになった二人があの写真が捏造であることを告白しています。すでに真相はわかっている事件の中で、まず描かれたのは写真を捏造した彼女達の動機。この手の動機のほとんどが売名や金なのに対して、彼女達の動機はそれとは違っていました。

 「私も幾度となく行っているのに妖精を見たことは一度も無い」 川へ遊びに行って洋服を汚してきた娘達を注意したときに、彼女達からそこで妖精を見たという話を聞いた母親の言葉。昔幼い息子を亡くしていた母親にとって、妖精はそれを信じていた息子の存在を感じることの出来る重要なファクターでした。だからこそその妖精を見たという娘達の言葉を看過することが出来なかったために口をついた前述の言葉だったのです。嘘をついていると思った娘たちの言葉に胸を掻き毟られる思いだったのかもしれない彼女。そんな母親に対して娘達が感じとったある種の哀れさ。”妖精を見せてあげたい” 彼女たちの想いはわずかにこれだけでした。 

 それは母親を想った故の少女達の他愛のない嘘。そんな微笑ましいはずのひとつのエピソードでしかない話が、しかしこれで終わらなかったのは、なによりも、あのアーサー・コナンドイルの登場以外の何物でもありませんでした。彼が出てきたことによってこの小さな出来事は大事件へと発展していきます。なにせ「シャーロック・ホームズ」シリーズの作者で、現代でも知らない人はいないほどの超有名人。そのホームズといえば、論理的な推理と科学捜査で犯人を突き止める探偵の代名詞。当時のロンドン警視庁でさえ科学捜査の導入はまだ途上だった頃のホームズは、理論と科学の申し子でもありました。その作者ならば当然ホームズをしのぐほどの論理的思考の持ち主であったはず。その彼が妖精の写真を本物と認めてしまった!! あのコナンドイルが本物というのなら本物だ。おそらく偽物と訝っていた人も多かったはずのあの写真に彼はその自分の名声で多くの人を信じさせてしまったのです。

 しかし、そもそも何故論理的にも聡明だったと思われたコナンドイルが、妖精の存在を信じたのか? 確かにいくつかの技術的根拠はありました。合成の後が存在しないこと。撮影時に妖精の羽根が動いている形跡があること。そもそもシャッターを押す事ぐらいしか出来ない少女たちに合成等そんな技術は持ち合わせていないこと等。しかしこれらはコナンドイルにとって、自分が信じる為に必要な最低限の論理に過ぎず、本当の理由は論理などとは別の意識だったと思われます。それが戦争による息子の死。亡くした子供ともう一度接点を持ちたかった彼が当時すがったのが心霊術だったのです。どんどんオカルト的なものに浸食されていった彼にとって、妖精を本物と断定することは当然の結論だったのかもしれません。劇中、そんな晩年のコナンドイルを演じていたのはピーター・オトゥール。彼のその存在感は、当時のコナンドイルの高名さを知らなくても、観ているこちらが理由無く実感してしまえるほどに印象的でした。そして往年のスクリーンの姿からは随分と老いた彼の姿は、そのまま絶頂期を過ぎ年老いたコナンドイルとも不思議なほど見事に重なって見えてしまうのです。

 ただ、このままではあまりに悲しさだけを強く感じてしまうようなこの物語がドラマ的に成り立ったのは、もうひとりの実在の有名人の登場によってだと思います。それが、ハリー・フーディーニ。かつて”脱出王”と言われた世界的天才魔術師。劇中はコナンドイルの友人として登場する彼は、妖精の存在を信じてはいません。事件の経過とともにコナンドイルと行動をともにしながら彼なりの真相を探ります。もともと彼は超能力者や霊能力者をそのマジシャンとしての視点からいくつものトリックを暴いてきた人物。そんな否定派の代表として登場する彼ですが、彼はこの件に関しては積極的に事件を暴くような行動はしません。彼の行動は、全てを知ったうえで少女達を守るべき大人としての行動でした。

 そもそもエルシーとフランシスには名声欲も金欲もありません。事件が知らないうちに勝手に大きくなって困惑したのは当の彼女達でした。結果的には二人の大事な場所だった小川までもが心無い見物客によって荒らされてしまうのです。しかし本当のことが言い出せない二人。マジシャンとして奇蹟を演じながらその仕組みは秘密にするフーディーニは、真相を理解しながらも彼女達の想いも理解できるゆえに二人に優しく接します。”本当は誰もそれを知りたがらないんだよ”そう彼女達に言うフーディーニ。演じるハーベイ・カイテルの優しげな笑顔は印象的で、そんな彼の優しさを少女達も感じることが出来たのだと思います。

 ラスト近く、”妖精を信じるか?”という記者からの質問にフーディーニはこう答えます。「私は不可能を可能にする男です。そして神秘は存在するのです」と。そしてこうもいうのです。「人の悲しみを利用して儲けるような連中を許さない。子供を亡くし悲しみに沈む親たちを食いものにする人々を憎む。でもこの子達には愛と喜びがある。」 かつてフーディーニにも、コナンドイルと同じ理由で霊能力に傾倒していた過去があります。かつて母親を亡くしその死んだ母の声を聞くことを望んだ彼。しかし彼がマジシャンだったために、そのどれもがトリックであることがわかってしまった。それゆえに彼らに対する憎しみも深く、それを暴くことに力を注いできたのです。しかし少女達は違っていた。実際には事件には関係しなかったフーディーニ。映画の中で少女達の心を救った彼ですが、現実の彼女達の心は誰かに救われたのでしょうか?

 この事件には大戦直後というその時代背景が大きく関係していると思えます。多くの人が家族や恋人を失い、すさんだ心が蔓延する暗い混沌とした時代。劇中でも幼い息子を病気で亡くしたエルシーの母親や、母親を亡くしたフーディーニ、戦争で息子を亡くしたコナンドイルと世界中の多くの人々など、この映画に出てくる人々は皆それぞれが失った愛する肉親への届かぬ思いを抱き続けています。そんな時代に多くの人々が求めた希望。彼女達が見せてくれた妖精はまさに夢の中で輝くその希望の光だったのでしょう。実際に宗教的にどういう位置付けなのかはよくは知りませんが、もとは天使だったという話もある妖精は、人間の世界と神の世界を結びつける存在だったのかもしれません。そこにあるかもしれない神の世界への扉を開く妖精。信じるか信じないかではなく、信じたい。信じてみたい。そしてそれを信じることは、失われた人たちがその扉を通り自分の側にいるかもしれないという希望だったのではないでしょうか?

 少女達の母親を想う心と優しさからはじまり、父親の子供を失った悲しみからそれは形を成し、多くの人達の亡くした肉親への想いから世界を巻き込むほど広がってしまったこの事件。にべなく言ってしまえば捏造写真に踊らされた世の中のちょっとした事件だったはずです。彼女達の使ったトリックの方法も実に子供っぽい他愛の無いもの。しかし、写真の合成跡など技術的な粗を探して真実は見えなかった多くの大人達と真実を見たくなかったより多くの大人達。劇中、小川のほとりを飛び回る妖精の姿。実際、フランシスは2枚は偽者だが、3枚目は本物。妖精は本当にいた。そう言っていたそうです、それが真実かどうかはわかりません。しかし、もしかしたら目に見えるものだけが真実ではないのかもしれません。それがそして見えないものにも想いと真実があることも。 

 

 コナンドイルにふれて、今度はシャーロックホームズの映画の話でもと思ったのですが、よく考えるとまともなホームズの映画を見た事が無い事に気がつきました。自分の中でホームズとして連想される作品は、昔NHKで放送されていたドラマか、「ヤングシャーロック」か、最近のロバート・ダウニーJr主演作か。あとは宮崎駿監督の「名探偵ホームズ」とか。という事でこの際は自分の好きな名探偵の映画にしようと思います。次回は名探偵金田一耕助の「犬神家の一族」について書きます。

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ぬいぐるみと少女

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