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タイトルバック 忘れられないあの表情 タイトルバック
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タイトルバック 「サブウェイ・パニック」 タイトルバック
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タイトルバック 2011.10.15 タイトルバック
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 喧騒漂う午後のニューヨーク。イエローキャブから降りた一人の男が、大きな荷物を手に地下鉄のホームへ降りて行く。首まで閉めたコートを着た口髭と帽子と眼鏡がかえって特徴的なこの中年男、しきりに時計を気にしながら、大きなくしゃみをしてはハンカチで鼻を啜るなどなにかと忙しい。そんな男を乗せた地下鉄は、次に止まった停車駅でやはり荷物を持った髭と帽子と眼鏡の男を乗せる。そして次の駅でもまた…。四つ目の駅で待っていた同じ格好の男は、しかし今度は停車した地下鉄には乗り込もうとはせず、おもむろに先頭車両へ向かうと、運転手にいきなり銃を突きつけて言うのだ。「列車を頂く」。

 冒頭、こんな風に静かにさりげなく、しかしポイントは観客達に示しつつ緊張感を滲ませながら始まるこの映画。地下鉄を乗っ取り、乗客を人質に身代金を奪おうとする犯人グループと、それを阻止しようとする警察官たちとの駆け引きを緊張感たっぷりに描き、70年代のサスペンス映画の傑作のひとつとも評されたのが今回書く映画「サブウェイ・パニック」(74年)です。

 映画の主人公はニューヨーク地下鉄公安局のガーバー警部補。地下鉄公安局とは馴染みがないですが、日本でいえば鉄道警察隊のことでしょうか。(石立鉄男主演のTVドラマ「鉄道公安官」が懐かしい)そんな彼は事件が起こった時は事務所のベンチで居眠りしているような、決して仕事熱心とは感じられないような男。彼は押し付けられた日本人視察団を運行本部に案内したときに事件に遭遇したために必然的に犯人との交渉役になり、事件の中心として動くようになります。(ちなみにこのときの日本人の描写は当時としてはいかにもという感じです。後から英語が喋れることが解るなど小ズルい感じの描写もありますが、昔観た時は他の映画も大体こんな感じだったので腹も立ちません。逆にあまりに暇そうにまったりと仕事をしているアメリカ人との対比を面白く感じました。このあたり今考えると「ガン・ホー」(86年/アメリカ)を思い出します。)

 犯人達は先頭車両のみ切り離し、乗客17名を人質にして、1時間以内に100万ドルを請求します。もし時間内に要求が聞き入れられなければ、1分遅れるごとに1人人質を殺すと脅迫するのです。地上ではマスコミを通じて事件を知った市内は騒然。警察感たちが地下鉄入り口に群をなします。地下深く停車している地下鉄車内の状況は把握できず、犯人の正体も、逃走方法も見当がつかないまま、設定されたタイムリミットだけが刻々と迫るのです。

 とにかく全編に小気味良い緊張感が漂うこの映画。たとえば身代金を払う払わないでのニューヨーク市長やブレインたちのやり取り。この口の悪いカリスマなど微塵も感じさせない市長が、理由はどうあれ早々に身代金を払うことを決めることでストーリーを加速させますし、また、犯人の指示どうりに身代金を用意するシーンでは、銀行で大量の紙幣が運ばれ、それを数え梱包するような細かいディテールもしっかり描かれます。このシーン、バックにかかるテンポの速いBGMとともに銀行員の作業を移動カメラが追っていく様は相当にスピーディーで、しかもあいだに市長や本部、そして犯人の場面が挿入されるなどめまぐるしく変わるカットは緩急が心地よく、絶妙のテンポを感じさせてくれます。普通なら金の準備の描写など”用意出来ました”と届くだけで説明してしまうのが当たり前でこのようなシーン達は蛇足にも思えますが、なかなかどうしてこのシーンが金の準備に時間がかかっていることを説得力をもって理解させ、その金をずっと待っている輸送役の警察官がしだいに焦っていき、重責が重くのしかかって行く心理をしっかり感じさせてくれるのです。

 その伏線があってこその身代金を輸送するシーンの溢れる緊張感。絶対に間に合わない時間設定ながら、白バイを先導にしてニューヨークの路地を猛スピードでパトカーが疾走する。「間に合わない」そう口をつきながらも必死に運転する警官の様子が描写されるからこそ、観ているこちら側の心拍数まで上がっていき、その後パトカーが飛び出してくる市民を避ける為に事故を起こし横転するシーンも、思わず”やっちゃった”と思ってしまうほど映画に引き込まれてしまっている自分に気がつくのです。普通ならこの流れ、ご都合主義のそしりは免れられないようなシーンなのですから。

 結果的に地下からは確認しようがないことに気づいたガーバーが、到着していない金を到着したと嘘をついて最初の危機を切り抜けるのですが、このシーンに限らずこの映画全般、煩雑な地上の騒乱と静寂な暗い地下での犯人グループと人質達との対比が強いコントラストを醸し出していて、相当に印象的です。そしてその二つをつなぐのがガーバー警部補と犯人達のリーダーであるブルーの無線でのやり取り。このやり取り、一方的にブルーが主導権を握り、受けに回るしかないガーバーですが、その中でも少しでも情報を得ようとするガーバーなど心理戦の様相も呈していて、しかしながらその中での軽妙な台詞にガーバーの反骨心を感じさせるなど本当にわくわくするのです。とくに犯人の無線から度々入ってくる犯人の1人であるグリーンのくしゃみの音。渋い顔をするブルーの気持ちなど関係なく、皮肉まじりに地上から「お大事に」と声を掛けるのです。

 映画終盤、計画どおり金を手に入れた犯人達は逃走を試みます。その逃走方法は、仲間の1人が元地下鉄の運転手であることから考えられた(というかそのために元運転手を仲間にした)地下鉄の安全装置を逆手に取った方法で、金の梱包方法もその後の運行本部への指示もしっかり理にかなっています。そして地下鉄の車両からの脱出に成功。人質だけが残された車両が運転手なしの状態で加速しながら突っ走るというパニック映画的な見せ場もしっかり用意しています。その中で非常口から犯人が脱出するも、命令を聞かない1人はリーダーのブルーが射殺。他の1人も地下鉄の人質の中に紛れ込んでいた刑事に撃たれ殺されます。元運転手の犯人は逃げますが、リーダーはガーバーに追い詰められ、自殺するのです。

 映画のラストは1人だけ逃げおおせた犯人の追跡。元運転手で懲戒免職された過去を持つ動機のある人間を手当たりしだい自宅を訪問、確認していきます。そしてついに犯人宅にもやってきて…。その男の挙動の不自然さに何かを感じながらも、また来るといって外へ出てドアを閉めるガーバー。安心したのか思わず口に手をあてて、くしゅん。「お大事に」。ああ、何度もあったこのやり取り。閉まりかけていた玄関のドアが再びゆっくり開けられて、そこにはグリーンを見つめるガーバー警部補が…。

 色々書きましたが、この映画が自分にとって今なお忘れ得ない作品となっているのは、まさにこのラストシーンのラストカットで見せるガーバー警部補のその表情。なんといえばいいのか、困ったような、呆れたような、恨めしげな感じにもみえる、なにか形容のしがたいながら一度見たら絶対に忘れられないこの絶妙の表情。そんなガーバー警部補を演じるのはウォルター・マッソー。これを見る前は自分の中では「がんばれベアーズ」(76年/アメリカ)くらいしかイメージがなかったこの俳優ですが、ラストカットの芸術的なその表情は彼以外には表現できないとさえ思え、結果的にこの映画はウォルター・マッソーのこの表情だけで傑作足り得たのだとさえ思ってしまうのです。

 そんな主人公に対し、犯人グループのリーダーであるブルーを演じたロバート・ショウは、もと傭兵という過去を持ちながら秩序を守り紳士的にさえ見える犯人像を強烈に演じていました。そんな犯人が見せる胸の奥にひそめるその強固な決意は、相手に有無を言わせぬ口調と、人質やルールを守らない仲間を簡単に殺すその行動に如実に現れます。しかし、それらの行動も安っぽい残虐性というよりも、彼の生きてきた世界における動かし堅いルールに添っただけの、自分なりの生き方を表現しているだけのようにも思えたのです。だからこそ、計画が失敗した時にはあれほどあっさりと死を選んだのかもしれません。

 この映画、決して派手な作品ではありませんでしたが、ストーリーはもちろんテンポもよく、主人公と犯人の虚虚実実の駆け引きあり、カークラッシュや銃撃戦あり、とメリハリの利いた本当に面白い映画であることに間違いはありません。また細かいところにも気を配っていて、例えばはじめて観た時は気づかなかったのですが、冒頭くしゃみをして鼻をかんだグリーンが思わず口ひげの位置を確かめるカットなど、丁寧に作っているという印象があります。自分が観たのは公開時ではなく、十数年後にビデオでの鑑賞が最初ですが、当時が学生時代ということもあって、この頃のほかの刑事アクション映画と同様、70年代のハリウッド製サスペンス&アクション映画は、ある意味ノスタルジーの雰囲気も感じられてやはり忘れられない映画の1本なのです。

 

 この映画を最初に何で知ったかは覚えていませんが、最初に映像をみたのは中学か高校のときのあるTV番組でした。洋画と邦画を比べて、ハリウッド映画はこんなに凄いのに日本映画はこんなにショボイというような事を見せる事が趣旨の番組だったのですが、そのハリウッド代表が「サブウェイ・パニック」で、実際の地下鉄の車両を使用した迫力ある映像として、ブラウン管に流れていました。それに対して、ショボイ日本映画代表として登場したのが、「新幹線大爆破」(75年/日本)。セットの車両の中で大げさによろける役者やミニチュアの新幹線がちょろちょろ動く映像が流れていたと思います。このとき自分の頭の中には「新幹線大爆破」=ダメ映画という図式がなんとなく作られてしまったのです。それから数年後、ビデオ屋の片隅にあった「新幹線大爆破」のソフトを見つけ…。いや、映画なんて実際に見てみないとその面白さは分からないものだとつくづく感じました。次回はその「新幹線大爆破」について書きたいと思います。

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