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タイトルバック 市川流浅見光彦は、やっぱり金田一耕助だった…。 タイトルバック
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タイトルバック 「天河伝説殺人事件」 タイトルバック
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タイトルバック 2011.08.14 タイトルバック
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 1991年、角川映画15周年として、第1作の「犬神家の一族」を撮った市川崑監督が再びミステリー映画を撮ることになります。大ヒットさせた金田一耕助シリーズに変わって登場させた探偵は、現在では絶大なる人気を誇るあの浅見光彦でした。この内田康夫が生み出した平成の名探偵によって新たに人気シリーズを生み出そうと作られたのが、今回の「天河伝説殺人事件」(91年)です。

 東京の高層ビル街で中年男性が毒殺されるところから物語は始まります。彼が死ぬまで持っていたのは五十鈴という天河神社のお守り。一方、高名な能の水上流宗家である和憲は孫の兄妹、兄の和鷹と妹の秀美のどちらかに次期宗家を次がせようとしていました。そんな時、水上流分家の高崎が天川村の山中で死体で発見されるのです。この事件の容疑者として確保されていたのが、能の取材に来ていたルポライターの浅見光彦。その浅見は高崎の死の謎の解明を秀美に依頼されます。しかし、次期宗家を決めるための追善能で和鷹が毒殺されてしまう。次期宗家争いにまつわる家中の対立。天川村の旅館の女将、長原敏子の存在。東京で殺された男と事件との関係など謎のまま天河神社の薪能の日が訪れるのです。

 あの市川崑監督が浅見光彦を撮る。確かTVか雑誌で制作発表を見て、当時とても期待したのを覚えています。金田一シリーズは大好きでしたし、浅見歴はまだ数冊だったとは思いますが、水谷豊のキャラクターでしっかりイメージが根付いた自分としては嬉しく、しかも、主役の浅見を演じるのは前から好きだった俳優の榎木孝明。ヒロインの財前直美に不安が残るとしても、どんな映像を見せてくれるのか本当に楽しみでした。金田一シリーズを劇場で観た事が無かったこともあって、嬉々として映画館に足を運んだ自分。しかしスクリーンに映し出されたその映画は、ある意味想像どうりで、しかし全く期待したものとは違っていました。

 はっきり言ってしまうとこの映画、とても金田一シリーズを意識していた、というか、し過ぎていたように思えました。それは例えば演出的なもので言えば、黒バックの浅見のカットだったり、背景のセット等の建物だったり、映画のトーンや照明だったり、です。それぞれが金田一が推理するカットや金田一シリーズに共通した戦後の町並みや雰囲気を連想してしまうのです。天河舘の描写などはまだ意図があったとしても、川島の娘が泊った旅館や警察署など平成の時代とは思えないアナグロさ(アナログではないこんな表現が昔確かに有ったと思うのですが…)。そんな見せ方が映画の設定とは随分と違和感があったのです。またキャストも仙波警部補役の加藤武や神官の大滝秀治、それに岸恵子や岸田今日子など(石坂浩二は多分にゲスト的な意味合いが強いとは思いますが)金田一作品の常連がその作品のイメージそのままで出てきていました。

 なにより一番気になったのがそのストーリーです。この「天河伝説殺人事件」は随分原作と内容が変わっています。もちろん原作通りではない映画など山ほどありますし、原作者に許可も取ったというし、それ自体には問題など無いのですが、その変更の仕方がちょっと…。川島の死から追善能での和鷹の死、そして終盤の薪能という大雑把な展開はそのままとしても、二人静と道成寺の番組の演者の組み合わせとか、失踪後死体で発見される人間が宗家と高崎老人が入れ替わっていたりとか他も含めて様々な変更点がありました。しかしそれ以上に物語に対するイメージを変えているのが映画での長原敏子の描写。このキャラクター、原作では結果的に一度も姿を出していないのです。重要な人物としてその存在は描写されますが、それも終盤になってのこと。原作は、ずっと第三者、しかも女性がいるであろうことを感じさせながら、顔も名前もわからないその謎の人物が、死んでいった人間達とどういった関係を持ち、それがどこの誰なのかを少しずつ追っていくという物語でもあったのです。しかし映画は、冒頭からスクリーンに顔を出し、終始映画に顔を見せ続けているのです。

 原作で登場シーンの少ないキャラクターを映画で膨らませるというのもよくあることですし、市川監督も”原作では影のように沈めてあるこの人物の境遇と心理を新しく大きく書き起こした”といっているように、この人物をあるいはもうひとりの主役として映画を作ろうとしたのかもしれません。しかしその監督の考えた長原敏子という人物描写が自分のその一番に気になる部分。彼女の人物像の、”天河舘という古ぼけた旅館の女主人で耳障りのいい方言を話し、古楽器の堤を趣味にし、終始おっとりで優しげに話す着物を着こなす年配の美人”というこの設定が、あの金田一シリーズの「悪魔の手毬唄」の青池リカをどうしてもイメージしてしまうのです。しかも、そんな彼女が物語の中では傍観者のように行動しながら実は和鷹を殺したのは彼女であり、更に本当は和鷹の実の母親で、宗家を殺すつもりで間違えて本当の息子を殺してしまっていたというデジャヴのような展開。更にそんな敏子を演じている女優が岸恵子では、もう「悪魔の手毬唄」を連想するなというのが無理な話です。最後には自分が犯人であることを蔵の中で秀美に吐露するというこれまた明らかにイメージがダブってしまうシーンまでありますし。これでも実は彼女は犯人じゃないという展開ならある意味意表をつくことにもなるのでしょうが、そんなこともなく、物語の途中ですでに凶器である毒物を作った痕跡まで見せてくれています。

 監督は犯人を隠そうとするつもりは無いのでしょう。逆に犯行に到る彼女の境遇や想い、辛さや哀しさなどを見せたかったのかもしれません。それほどまでも監督の彼女への思い入れを相当に強く感じてしまうわけで、その描写は止むに止まれぬ事情で和鷹の他に高崎と川島まで殺してしまった可哀想な女性というスタンスを貫きます。しかしその結果、割を食ったのが最初に殺された中年男性の川島です。原作では彼が敏子に協力するのはかつての初恋の女性だったからで、”無意味なことをやる楽しみがこの世の中にある”そう言って、彼女からの頼みを無償で引き受け、その行為に喜びを感じてしまうような男。これが原因で殺されてしまいますが、こんな中年男の純情には微笑ましさと共感を覚えます。そんな川島だったのに、敏子への過度の共感を集めるためか、映画の川島は自分の営業成績のために同窓だった敏子に近づき、彼女と和鷹の父親との関係をネタに水神家をゆするという極悪人に変更されてしまいました。これでは父親の死の真相を突き止めようとする娘の妙子に情が流れることは無く、本来秀美とならんで原作では二人目のヒロインであったはずの妙子は、映画ではストーリーの進行を少し促すだけの端役に成り下がってしまいました。(多分映画は別人ということなのでしょう。幸司=孝司、妙子=智春と、映画原作では下の名前が違っていましたから。)そな風に思ってしまうと、他にもメインヒロインである秀美の描き方もなにかぞんざいさを感じてしまいます。浅見との関係も、もとは和鷹が死んだときにちょっと鋭いことを言った人程度だったはずのに、そんな知らない人に秀美はわざわざ会いにいったりして、更にそれほどの遍歴があったわけでもないのに突然”結婚したいと思っている”なんて言っていました。(原作では浅見家は水上家の恩人という設定でした)真っ赤なスポーツカーを乗り回し粗野に振舞う彼女は、演じる財前直美のバブリーな見た目もあって、とても能の次期宗家候補には見えず、なにかわざと観客の共感を逸らしているかのようにさえ感じたものです。

 本来原作は能の世界を舞台にしながらもシリーズには珍しく多分にファンタジー的な要素を持ったミステリーだったと思います。また、シリーズにおいては大抵「男はつらいよ」のように毎回マドンナ的なキャラクターがでてきて、浅見とつかず離れずという関係になるのですが、「天河〜」はそんなシリーズの中でも女性キャラクターが多い華やかでしかもちょっと艶っぽい作品でした。しかし市川監督はこれを閉鎖的な能の名家内で起こるどろどろとした後継ぎ問題と我が子を思う故に過ちを繰り返す哀しき女性の愛憎劇に偏重させてしまったような気がします。その結果、例えば浅見光彦シリーズの定番である、水戸黄門の印籠よろしく兄が刑事局長であることがばれるシーンはあまりにあっさりしていてカタルシスをほとんど感じませんし、浅見一家の楽しげな喧騒の描写もありません。市川監督はこの作品を自分の流儀で料理しようと思った故の大幅なストーリー変更だったと思いますが、何か結果的に自分の昔の作品自体にこだわりすぎて、市川流というより金田一流というような作品になってしまいました。確かに金田一的なものを期待しましたし、作る方もそういう方向性であることは分かってはいたのですが、勝手ながら自分的には「犬神家〜」のときの斬新さを凌ぐような浅見シリーズ独特の新しい映像の見せ方が観たかったのであって、金田一シリーズのテクニックで映画化して欲しいわけではなかったと思います。これでは別に新しい探偵ではなくとも、金田一耕助の新しい作品でも良かったのではと当時残念に思った記憶があります。

 この浅見光彦ミステリーはシリーズ化が進んでいて、第2作目は確か「隠岐伝説殺人事件」ではなかったかと思います。アナウンスもしていたような気がしたのですが、結果的に続編は作られること無く、今もって映画はこの1本のみとなっています。市川監督もその後「八つ墓村」(96年)と「犬神家の一族」(06年)を発表しましたが、いずれも金田一耕助の物語で、浅見光彦の映画はついぞ作ることなく逝去されました。ですから、映画のラストシーンに画面に映る「浅見光彦事件簿ファイル第一号」という文字が自分にはなんとも寂しく思えて仕方がないのです。

 

 浅見光彦の映画はこの「天河伝説殺人事件」1本切りでしたが、TVドラマにおいてはおそらく類を見ないほどの隆盛を極めました。ということで次回は自分の覚えている浅見光彦のTVドラマシリーズについて少し書きたいと思います。

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