K-Titleback
K-Titleback 明日キットデキル絵 K-Titleback
K-Titleback Gallery K-Titleback
Gallery K-Titleback
K-Titleback Profile K-Titleback
K-Titleback Movie K-Titleback Profile K-Titleback
Movie K-Titleback K-Titleback Mail K-Titleback Link K-Titleback
Mail K-Titleback Link K-Titleback
K-Titleback Top K-Titleback
Top K-Titleback
K-Titleback Profile
K-Titleback Mail K-Titleback Link
K-Titleback
K-Titleback Top
K-Titleback
K-Titleback
カチンコ
映画タイトル少年
タイトルバック
タイトルバック それでいいのか?ポアロ。 タイトルバック
タイトルバック
タイトルバック 「オリエント急行殺人事件」 タイトルバック
カチンコ 037 カチンコ
タイトルバック 2011.09.25 タイトルバック
タイトルバック
カチンコ
タイトルバック

 シャーロック・ホームズと並び称される名探偵、「灰色の脳細胞」のエルキュール・ポアロ。ミステリーに対してあまり知識のない自分でも名前だけは知っていたこのアガサ・クリスティーの生んだ有名な名探偵が主役の映画は何本かありますが、今回はある意味一番記憶に残っていた一本「オリエント急行殺人事件」(74年/イギリス)について書きたいと思います。

 ある事件の依頼を受けたエルキュール・ポアロがロンドンへ向うため、親友のビアンキの協力で満室だったオリエント急行へ何とか乗車する。しかし、出発した列車は夜半、大雪のため停車。そして夜が明けた時、一等車に乗っていた富豪のラチェットが殺されていたのが発見される。被害者が持っていた時計が止まっていた時間や犯人の逃走した後がないこと等から犯人は同じ一等客室の乗客の誰かであると考えたポアロは、ビアンキの依頼で捜査に乗り出すが、その過程で被害者のラチェットが実は5年前に起こったアームストロング大佐の娘の誘拐殺人事件の首謀者であることを突き止める。アームストロング一家や関係者がその後哀れな運命をたどった事から、犯人をこの事件に関係するものの犯行と考え、ポアロは乗客一人一人尋問を開始するが…。

 金田一シリーズの市川崑監督が自身のペンネームに久里子亭という名前を使ってしまうくらいに好きだったというアガサ・クリスティですが、それまでこのクリスティを読んだことはありませんでした。せめて映画はというわけではないのですが、当時クリスティ原作の映画で初めて観たのがこの「オリエント急行殺人事件」でした。

 クリスティの他の作品がどうかは分かりませんでしたが、この映画を観ての一番最初に思ったのは典型的なアームチェア物を堂々と映画にしているという印象でした。もちろん自分が観た時すでに公開から十年以上経っていましたから、典型という言葉が当てはまるかはわかりませんが、様々な容疑者が集まってきて、事件が起こり、居合わせた探偵が一人一人に話を聞き、その彼らの様々な証言の内容から謎を解いた探偵が、最後は全員の前で謎解きをする、という展開で、事件が起こるのが動けない列車の中での殺人という隔離された状況での密室殺人劇。見た当時、すでに様々な亜流に毒されていた自分にとってはこのパターンの王道を見たような印象がありました。

 そんなこの映画が記憶力の乏しい自分の頭に今でも残っているのは、やっぱり単純に犯人の正体に驚いたからです。てっきり王道のような映画だと思っていたのに、ポアロが導き出した新犯人が、掟破りの”12人の容疑者全員”だったなんて。正直、観終わった後これはアリなのか?とは思いました。全員が犯人ならば状況など操作し放題の何でもアリ状態だと思ったのです。しかし、クリスティにはこういう傾向のものが他にもあるらしいですし、意表をつくという一点に関していえばとにかく面白いのは確かでした。

 でもこの映画がその後繰り返し見るほど面白かったというとそうでも無く…。ストーリー的な面から見たとき、例えばミステリーは一回観てしまうと犯人が解ってしまいますから、次に観るときの興味はその犯人に到る過程、たくさんの容疑者や犯人の証言のほころびや挙動を改めて確認しながらどことどこが繋がっていくかという、徐々にはまっていくパズルの面白さがあると思います。何回も観たい映画というのはこの部分がしっかり出来ていて、最初に気づかなかった描写を見つけたときの嬉しさなども相まって、よく言われる”観るたびに発見がある”そんな形容が似合う映画だと思うのです。

 でもこの映画、犯人は全員ですから、彼らの証言は全て嘘という可能性があるため、観ていてもひとつひとつの証言を自分で咀嚼しようとする気にはなれず、見つかる証拠も全て自分たちの偽装であれば、考えても無駄という気がしてしまいます。ポアロと容疑者の掛け合いも何を意図しているのか、どの部分を注視すればいいのかよくわからないことが多いため興奮することもなく、謎解きも、例えば英語とドイツ語の読み方の違いだとか、習慣の違いだったりと馴染みの薄い事柄が多くて自分にはピンと来ず、最後に結果だけを受け入れるしかないという見方になってしまうのです。事件を解決するための重要な事実も全てポアロの知識によるもので、映画の流れから行っても、証言から事件の真相が少しずつ明らかになっていくというよりも、最初からポアロは大体の事件の粗筋をすでに考えていて、尋問はその裏づけを取っているだけのようにも思えるような描き方でした。

 ラスト、ポアロは真相を暴きながら彼らを告発しようとはせず、マフィアの抗争の末の殺人という嘘の結末をつくり、彼らの罪を見逃します。こういう結末もアリなのでしょうが、正直何か釈然としない終わり方に思えました、特に彼らが最後に清清しい表情で乾杯をしてお互いを称えあうようなラストシーンはかなりの違和感がありました。嫌悪感といってもいいです。罪に問う問わないは別にして、殺人を犯しながらこんな表情が出来る人たちに共感しうる人間性を感じなかったのです。もしかしたら彼らのうちの何人かは、何か人生に壁が出来たり、憤ることがあれば同じ殺人という方法を選ぶのではないかと。それでも尚この状況のシーンをどうしても入れるなら時系列的には謎解きの前であり、映画のシーンとしては回想としてではないかとも思います。この流れでは自分達が罪に問われないことを祝福しているようにも見えるのです。そうなるとますます人間性に疑問を感じてしまうのですから。

 そんな感じで個人的にはあまり好きという映画ではありませんでしたが、この映画でのポアロの描かれ方は割と好きでした。油を塗りたくって七三に固めた黒髪。ぴんと跳ね上げた黒ひげ。白い顔色に小太りの身体。首が回らないのか不自然にも感じる動きとその周りに溶け込めない異様にも思えるような雰囲気、そして自信たっぷりながら時に丁寧に、時に尊大に振舞う態度は、良くも悪くも一度観たら忘れられないほど印象的でした。けっして好意をもてるようにも描いてはいないと思いますが、そんな彼が寝るときに頭にネットを被って、ひげにマスクをして、クリームを塗った手に手袋をしてベットに入るシーンは、常人とはちょっと違うことを見せながら、若干の気持ち悪さの中に可愛らしさも含んでいて、なにやら可笑しく思えました。こんなポアロを演じるのがアルバート・フィニーなのですが、いわれても解らないほど顔かたちが変わっていて、そのメイクの巧妙さには驚きます。ここまでするなら別の俳優でもとも思ったりするのですが…。ですから、ポアロをフィニーが演じていると一番わかるのが実は映画のポスターのイラストだったりするのです。この映画のポスターが実はとても好きで、最近こういうポスターが無いのが寂しく思っています。

 この映画の監督はシドニー・ルメット。ルメットといえば他にも「狼たちの午後」(75年/アメリカ)や「ネットワーク」(76年/アメリカ)など好きな映画がたくさんありますが、やはり自身の社会派のイメージの元ともなった「十二人の怒れる男」(57年/アメリカ)の印象が一番強いでしょうか。そういえばこの映画も12人の容疑者が密室で事件の真相を求める物語でした。但し、「十二人〜」での、狭い密室で繰り広げられた個性的な12人のディスカッションドラマだったあの緊張感はほとんどありませんでしたが。そのかわり、この映画には全体からにじみ出る優美さがありました。犯人達の多くが上流階級の人間ということもあって、華やかな衣装や優雅な佇まいは上流階級への憧れを禁じえません。それらを演じているのがジャクリーン・ビセットやショーン・コネリー、マイケル・ヨーク、イングリット・バーグマン、アンソニー・パーキンスなど大スター達で(全てが上流階級の役ではないですが)、彼らの競演というだけでも映画自体が本当に華やかでした。その雰囲気は映画のトーンでも同様で、怨恨による殺人事件を描いていながらそこには陰湿さなど皆無でした。でも思い出すとその映画のトーンは最初からきちんと出ていたのですね。それが別の意味でこの映画の主役である、オリエント急行。その列車が発車するはじめのシーンがまさにそれ。まるで舞台劇のように一人また一人と演者たちが顔見せ的にオリエント急行に乗り込んでいく。やがて全てを受け入れた列車はライトを灯し、蒸気を吹き上げ、動輪をギシっと回す。ゆっくり動き出すオリエント急行。バックに流れる軽快なワルツにのって外の風景に同化していく列車は、今まで何度も感じた事がある旅の始まりのあの高揚感と重なって、わくわくするのです。「さあ!楽しい映画の始まりだ!」そんな口上までが耳に響いてきそうなそんなシーンでした。

 

 エルキュール・ポアロやシャーロック・ホームズを筆頭に、世の中には名探偵と呼ばれる人種がたくさんいます。ですが、良いことなのか悪い事なのかわかりませんが、実際にはそんな人達を見た事はありません。とすれば、当然名探偵が一堂に会する場面など想像し得ない訳で、もしそうなればそれはまさしく映画的な面白さ。というわけで次回はそんな名探偵が集うことから始まるコメディ映画「名探偵登場」について書きたいと思います。

近くのページ
フィルムケイ01
ぬいぐるみと少女

●SCENE-031「宇宙人の解剖」

●SCENE-032「フェアリーテイル」

●SCENE-033「犬神家の一族」

●SCENE-034「悪魔の手毬唄」

●SCENE-035「天河伝説殺人事件」

●SCENE-036「浅見光彦ミステリー」

●SCENE-037「オリエント急行殺人事件

●SCENE-038「名探偵登場」

●SCENE-039「刑事コロンボ」

●SCENE-040「サブウェイ・パニック」

映画動物
MOVIEメインページへ
フィルムケイ02

Top | Gallery | Movie | Profile | Mail | Link

Gallery Profile Movie Mail Link Top Top Top MOVIEメインページへ