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タイトルバック Wブライアンコンビ、ブライアン・ブラウン主演 タイトルバック
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タイトルバック 「アンボンで何が裁かれたか」 タイトルバック
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タイトルバック 2011.02.26 タイトルバック
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 アンボン島をご存知でしょうか。インドネシア東部にある島で、太平洋戦争中、その島には日本海軍の捕虜収容所がありました。そこでは戦争中オーストラリア兵を中心に1100名もの捕虜が収容されていたにもかかわらず、終戦後解放された時には300名程度しか残っていなかったのです。

 このような背景が舞台の映画が、ブライアン・ブラウン主演のオーストラリア映画「アンボンで何が裁かれたか」(91年)です。

 映画の冒頭、地面の中から発見されるのは大量のオーストラリア兵捕虜の遺体。ここから収容所の捕虜を虐待したうえ、300人以上の捕虜を殺害した容疑で日本軍の兵士達が軍事裁判にかけられます。そのためにやってきたのが検事のクーパー大尉(ブライアン・ブラウン)。日本人の非道な行為を憎む彼は、当時の最高責任者だったタカハシ中将(ジョージ・タケイ)を起訴。現在アメリカの庇護下にあるタカハシは、アメリカ人付き添いのもと来島、裁判を受けるのですが、当時の自分は不在で全ては直接の管理者であるイケウチ大尉(渡辺 哲)に委任していると主張。イケウチ大尉も虐殺はなかったと無罪を主張します。起訴したものの証拠はなく、元捕虜のオーストラリア兵達も心身喪失の状態で証人にもなれない状況。クーパー大尉は、当時近くを飛んでいた偵察機のパイロット達が行方不明になっていたことから、日本軍が彼らを捕まえた上で捕虜にせずに虐殺したのではと考えます。そこでまずパイロット虐殺事件を立証しようとしますが、タカハシは一切の自分の関与を否定。アメリカも彼に関する情報の開示を渋り、結果、タカハシ中将の無罪が確定します。

 この映画の前半で描かれるのは、”一番責任を負うべき人間” であるはずのタカハシ中将の無罪確定に最も大きな力を示したのがアメリカだというところ。皇族でもあるタカハシを、アメリカは戦後の日本統治のための政治的道具として利用するつもりだったのです。ここに同じ連合国として戦争を戦いながらも、国の力関係が障害となります。すでにソ連との対立構造を意識していたアメリカにとって、日本の占領政策は最重要課題であり、オーストラリアに対する配慮など持たなかったのです。映画は、この当事国でありながら、大国の意向に沿わなければいけないオーストラリアという国のジレンマを描き出します。それが虐殺事件の責任をタカハシに取らせようとするクーパー大尉と、タカハシへの強硬な追求を止めさせようとする軍司令官との対立に現れていくのです。司令官がクーパー大尉に「あんたはどっちの味方なんだ」と詰め寄られるシーン、その不審を抱かセてしまう態度の裏にあるものは、どちらかの味方とかそういった問題ではなく、オーストラリアという国の立場で行動しなければいけない人間のそれだったと思えるのです。

 映画は後半,タナカ中尉(塩屋俊)という通信係士官が自分から出廷してくるところから流れが変わります。その頃元捕虜が、パイロット達が処刑されたという事実と場所を思い出したのです。ここにパイロット虐殺事件が事実化され、その命令者がイケウチ大尉、実行者が自首してきたタナカ中尉であることがわかります。クーパー大尉の質問に、タナカは処刑の実行を素直に認めます。しかしそれは軍法会議の判決の結果であること、上官の命令であったことも同時に訴えます。実際には軍法会議は開かれていないのでは?との疑問に対しても、確認はしていないが当然あったはずと答え、さらにそれを含めた虐殺などタカハシは全てを知っていたこと、指示もしていたこと、それに対して抗議をしたが聞き入れられなかったことなども全て吐露するのです。

 タカハシが本当は有罪であることが証言されたものの、すでに無罪が確定しているため手出しができないクーパー大尉は、それゆえ、捕虜収容所の実質的管理者で残虐非道な行いをしていたイケウチを有罪にすることで、裁判を終わらせようとします。しかしそのイケウチが自殺してしまう。

 残ったのはタナカ。彼は軍法会議の結果の末であるとして合法性を訴えますが、やがてその軍法会議が実は存在しなかったことが分ってしまうのです。タカハシと仲の良い同僚の士官の、パイロット達を処刑する旨をタナカに伝えるときに”軍法会議の判決”と嘘をついていたという告白。そうしなければタナカは命令に従わないと思ったから。上官に反抗した部下がどうなるか知っていたから。

 友人であるタナカの身をおもんばかったためについた嘘。しかし、結局その嘘が友人の運命を決めてしまったのです。信じられないようなものを見たように、呆然とするタナカの表情がとても印象的でした。

 クーパー大尉の求刑。しかしその内容は”タナカがパイロットを殺したことは事実だが、被告の立場で何が出来たのか考えれば、実際に命令をしながら偽証したタカハシの罪を見逃し、実行犯のみを裁くことが正義とは思えない。”というもの。そして”寛大な処分をお願いします”とも。これは到底検事の言葉ではないのでしょうが、すべてが明らかになった状態でクーパー大尉が言えるギリギリの言葉だったのかもしれません。

 判決。”様々な事由を考慮したが、実際に処刑を行ったのは事実であり、しかも彼はその命令の確認を怠った。故に判決は…死刑。”

 確認を怠って、死刑。しかし、判事を含めたその場の全ての人間は分かっているはず。確認など出来るはずがないことを。たとえ確認したとしても状況は変わらないということを。それでも、このタナカという人間を裁くにはそれしかなかったのかもしれません。アンボンで裁かれている日本人の中で、最も高潔で純粋な心を持つ彼の犯したそれが唯一の罪だから。そしてまたオーストラリアという国にとっても、虐殺された多くの人間がいる以上、もし誰も裁かれないということになれば、国としての体面は失われ、国民も黙っていられるはずもないのですから。だからどうしても誰かを裁かなくてはいけなかった。ラストで処刑されるタナカの毅然とした態度は、しかしそのオーストラリアの兵士達に対して言いようのない何かを残すのです。

 ほとんどストーリーの羅列に終始してしまいましたが、この映画が描いているのは”B・C級戦犯の裁判”です。B・C級裁判をテーマにした映画といえば、有名なのは「私は貝になりたい」(59年/08年/日本)ですが、「私は〜」が裁かれる側からの視点で描かれているのに対し、「アンボン〜」では裁く側からの視点で描かれます。しかし、その裁く側から裁かれる側を見たとき、自分達もまた同じ立ち位置でいることを認識させられるのです。そして、両作品に共通しているものが、大きな力によって押し付けられるあがなうことの出来ない理不尽な運命。クーパー大尉も求刑のとき、こういいます。「この裁判で浮き彫りにされた事実は、権力と特権を持ったものが持たないものを犠牲にすることだ」と。

 太平洋戦争で日本に追及された戦争責任。その一端として起訴されたA級戦犯は28名。その内病死などを除く全員が有罪判決。しかし、絞首刑になったのはわずか7名。対して、B・C級裁判では984人に対して死刑判決が下され、しかもそのほとんどが命令をする側ではなく、命令されただけの実行者だったということです。

 

 戦後、世界中の国々を翻弄しながらもアメリカは世界の盟主たるために突き進んでいきます、その自負と自信の拠り所のひとつが、唯一無比の象徴的で絶対的な力でした。次回は、アメリカによる原子爆弾開発の歴史を描いたTVドラマ、ブライアン・デネヒー主演の「デイ・ワン 最終兵器の覚醒」について書きたいと思います。

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