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タイトルバック 「デイ・ワン 最終兵器の覚醒」 タイトルバック
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タイトルバック 2011.03.05 タイトルバック
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 昔、「来るべき世界」(36年/イギリス)という映画がありました。この近未来の世界戦争を描いた作品の原作と脚本は近代SF小説の父H.G.ウエルズ。そして、その中に登場するのは強大な破壊力をもつ新型爆弾。しかしその架空の兵器はこのとき本当に小さな産声をあげていました。

  今回書くのは「デイ・ワン 最終兵器の覚醒」(89年/アメリカ)。第二次世界大戦中、アメリカの原子爆弾の開発の歴史を描いてエミー賞を受賞した歴史ドラマです。

 1933年にレオ・シラードというユダヤ人科学者がドイツを脱出するとこらから始まるこの物語。初めて理論的に原子爆弾の実現性を思いついたこの物理学者は、亡命先のアメリカで原子爆弾の製造を働きかけます。その結果、1942年にルーズベルト大統領により認可された原爆開発計画は、マンハッタン計画としてスタート。この計画の最高責任者に任命されたグローブス将軍は、科学研究の統括者としてオッペンハイマー博士を召集します。その後、世界で初めて核分裂連鎖反応の制御に成功したアメリカは、1943年にはロスアラモスに巨大な研究施設を作り、本格的に原爆の開発と製造を進めます。そして世界最初の核実験。実に2年半の歳月と20億ドルの税金と10万人超を動員して完成させた原子爆弾。この計画は、広島と長崎への投下によって、最初のピリオドを打つのです。

 史上初めての核兵器が、如何にして考えられ、どのような過程を経て、どのような人たちの手によってつくられていったかをこのドラマは描いていきます。その描写自体は淡々としていて、必要以上にドラマチックにすることも、必要以上に悪意や善意を描いたりもしません。また、様々なエピソードをひとつひとつ積み重ねて、結果的に大きな流れとして動いていく様は、3時間を超える尺も観ていて気になりません。いくつもの技術的なハードルを越えながら形をなしていく原爆と、それを使うのか、使うとしたらどう使うかを様々な人たちがそれぞれの立場や考えでぶつかっていく、そうした人間ドラマとしても見ごたえがあります。

 物語の主要となるのはシラードとグローブス将軍とオッペンハイマー博士の3人。ナチスドイツよりも先に原爆を造ることが目的のシラード。当時のドイツは原爆を造る技術力を要しており、ナチスが先に原爆をもつことになることを何よりも恐れた彼の目的は明確です。対して、グローブス将軍(この人物を演じるのがブライアン・デネヒー)は、軍人として、原爆は同胞を守る手段であり、憎い敵を打ち滅ぼす力として計画を進めます。そして一人の科学者として国家事業に従事するオッペンハイマー。

 このオッペンハイマーからはこの戦争に対しての考えやこの計画の意味などを、観ていてあまり感じることが出来ません。オッペンハイマーにとっては、昔、共産主義に傾倒していた過去を持つものとして、自分に対する国の考えを改めさせるため、そして、そんな過去をもつ彼を責任者に引き立ててくれたグローブス将軍へ報いるために原爆の開発に従事しておりその行動はあくまで科学者として、そして技術者としてのものなのです。

 印象的なシーンに、終盤 原爆完成のめどがたったアメリカが、委員会を設置し、原爆投下の是非とその方法を話し合うシーンがあります。本当に原爆を日本に落すのかと不安がる幾人かの同僚に、原爆を日本に投下する前に日本人を呼んでその威力をみせるという示威行動を考えていると説得して委員会に臨んだオッペンハイマー。しかしグローブス将軍は強行に投下を進言します。理由は最終的に行われるであろう日本上陸作戦で失われる兵士達の命。その様子を察すると、オッペンハイマーは示威行動の提案をすることをやめ、自らその提案の不合理性を訴え、挙句に同時にいくつも原爆を落したらなんてことも言い出すような日和見的なところをみせるのです。それに対してシラードは、(委員会には出ていませんが)ドイツが降伏するや、すぐに原爆開発の中止を進言します。ドイツが原爆を造っていないならもう原爆をる必要はない。いや、逆に軍拡競争の火種になるから存在しないほうがいいと。

 それぞれ自分達の作り出した物に対してどのような認識を持ち、どう決着をつけようとするのか。明確な目的をもった者達はそれがどういったものであれ、明確に意見します。しかしその中でオッペンハイマー以下多くの科学者たちが近視的な視点しか持ち合わせていなかったように見えたのが残念に思ったことを覚えています。

 また、他にも原爆を投下する都市の候補地の選定のくだり、グローブス将軍が第一目標として京都をあげるも、陸軍長官の指示により断念する場面など、興味深いシーンは多々ありました。(原爆の投下目標などに関しては、昔読んだ、京都に本格的な爆撃が行われなかった本当の理由を記した「京都に原爆を投下せよ」(吉田守男著)にも書かれていて、とても印象に残っています。)

 最終的にアメリカという国は原爆を使用します。いくら反対があろうとも、原爆は造った以上使わなくてはいけない。使うことによってその威力を世界に見せけなくてはいけない。当面これからの敵であるソ連に対しては特に。本来ドイツから世界を守るための手段であった原子爆弾は、いつのまにか原爆それ自体を造ることが目標となり、それはやがてアメリカの国力を示し、他国に対して国際競争で優位に立つためのジョーカー的役割を担っていくことになるのです。

 アメリカにおいては、原爆についての意識や考えをもっている人たちはけっして多くないといわれます。でも、こういうドラマが作られこと自体、アメリカにおいても原爆に対しての問題意識はあったのでしょう。日本でも話題になった核戦争後のアメリカを描いた「ザ・ディ・アフター」(83年/アメリカ)や原爆が投下された広島を描いたノリユキ・パット・モリタなどが出演する「ヒロシマ」(90年/アメリカ)など、特に冷戦時代などではTVドラマで題材になることも多かったのですから。(内容的にはけっしていいものだとは思いませんでしたが)

 日本人にとって切っても切れない関係を持ち、それゆえどうしても特別な感情を持たずにはいられない原子爆弾。当然このドラマにも様々な思いや見方があると思います。自分など、原爆が完成に近づくにつれて何か死刑執行のカウントダウンが始まっているような気さえしました。でも、これも現代を形作る歴史のひとつなのかなとも思うのです。(かつて観た、旧日本軍の731石井部隊を描いた香港映画「黒い太陽731」(88年)の冒頭の一文「友好は友好、歴史は歴史」を思い出します。)

 ちなみにほぼ同じテーマの同じ物語を描いた映画に「黙示録1945−ここに核の全てがある」(87年/フランス・カナダ)がありました。こちらはいろいろな国の科学者達が原子力や原爆の様々な可能性を研究、発見していきながら原子爆弾へつながっていくといった展開になっています。ほぼアメリカ一国の中で展開し、ともすれば原子力の研究はアメリカだけで終始していたような印象すら覚える「デイ・ワン」に対して、現実にはヨーロッパ各国で盛んに行われていた原子力の研究の様子を多く盛り込んだ作品になっていました。

 

 実際に使用された原爆は2発。しかし、その結果に満足せず、より強力な原爆を造るためにアメリカは実験を繰り返します。そしてそれがまたしても新しい問題を引き起こします。次回は、同じ核にまつわる物語を描いて同じくエミー賞を獲得したTVドラマ「ナイトブレーカー」について書きたいと思います。

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