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タイトルバック 赤か?青か?本家本元の緊迫感は圧倒的! タイトルバック
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タイトルバック 「ジャガー・ノート」 タイトルバック
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タイトルバック 2011.11.13 タイトルバック
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 ドラム缶に偽装された爆弾の側面に開けた穴から中を覗き込む。そこには金属の円柱がひとつ。先ほどまでのゴチャついた中身とは対照的に、がらんとしたスペースで鈍く光るその起爆装置からは赤色と青色の2本のコードが上に向かって延びていて、その先は見えない。しかし、爆弾を解除するためには2本のうちのどちらか1本のコードは切るしかないのだ。正しい選択をすれば爆弾が止まるが、間違った方のコードを切れば爆発する。どちらを切れば良いかを知ることは不可能で、それを知っているのは爆弾をつくった犯人のみ。もうタイムリミットまで時間が無い。赤か? 青か? さあどっちを切る?

 いきなりのクライマックスで恐縮ですが、シチュエーションだけなら誰でも一度は見覚えがあるはず。リスペクトか、オマージュか、それともただの模倣なのかは知りませんが、映画、ドラマなど様々に使われてきたこの展開は、しかし今もって爆弾ものでは定番であり続けています。そんな王道シチュエーションのオリジナルが、今回書く「ジャガー・ノート」(74年/イギリス)です。

 1200名の乗客を乗せて北大西洋へ乗り出した豪華客船ブリタニック号。しかし、ジャガーノートと名乗る人物からこの船に7個の爆弾を仕掛け、夜明けの時間に爆発するという脅迫を受ける。乗客の命を助ける為に要求された身代金は50万ポンド。全てが爆発すれば船の沈没は免れず、悪天候で船からの脱出も不可能な状況のため金を払おうとする会社を政府は政治的観点から押しとどめ、警察に犯人逮捕を指示すると同時に、爆弾解体のためファロン中佐率いる爆破物処理班を派遣する。船内にある特殊な爆弾をファロン中佐達は解体できるか? 

 悪天候下の客船、しかも大洋のど真ん中という逃げ出せない閉鎖された空間のなか、いつ爆弾が爆発して船が沈むかもしれないという極限状態で身の危険に晒される乗客たちと、解体不可能とも思える爆弾に命を掛けて立ち向かう爆破物処理班たちを圧倒的な緊張感を持って描いたこの映画。状況こそパニック映画的な要素が多いとはいえ、同時進行で必死に犯人を追う刑事たちの追跡劇と相まって、その緊迫感はまさしくサスペンス映画と呼ぶにふさわしい作品でした。

 そんなこの映画でありながら最初に印象が残るのが、この手のよく観るハリウッド映画との若干の毛色の違い。それは終始映画を覆うトーンの低さというか暗さであり重さでした。冒頭から分かりやすく、出港した場面の空は曇天で海は鉛色。青く突き抜けるような青空もマリンブルーに輝く海もみられず、乗客たちにも一様に旅に出ることへの高揚感は感じられません。無理に何かを抑えているというより、なにか冷めた趣で行動しているような感じで、それはその後の突然の爆発や爆弾が船に仕掛けられたことを知らされたときにもほとんどパニックを起こさないところからも伺えます。ただ、悪天候のためカメラを通して映される揺れる船体と強い風は乗客のみならず見ているこちらの不安感のみを煽っていくのです。

 爆破物処理班のチームが荒海の中のブリタニック号に乗り込もうと飛行機からダイブする中盤でのシーンなどは、この映画の数少ないアクションの見せ場ではありましたが、やはりトーンの重さは変わらず、荒れ狂う海に翻弄されつつもなんとか船に辿り着き命がけで縄梯子を登りきった彼らを観ても成功したことへの歓喜はほとんど感じず、ほうほうの体で何とかおぼれずに海から這い上がったような哀れささえ感じてしまいます。何故なのかは分かりませんが、それらの描写は観ているこちら側からすると随分感情移入しづらい雰囲気を持っているのです。だからでしょうか。客観的な視点を余儀なくされる分、逆にリアリズムのようなものを感じるようになっていくのです。

 しかしそんな冷たい空気が蔓延する状況は後半に一転します。この後半、ファロン以下処理班のメンバーがいよいよ爆弾を解体していく展開はまさに映画的サスペンスに溢れるのです。まず、メンバーがそれぞれひとつづつ爆弾の前に陣取り、ファロンが自分の手順を連絡しながら解体していきます。もし間違ってファロンが爆死すれば、次の人間がその後を引き継ぎ、別の手順を進めていくという方法。人道的にどうかとも思いますが、それを実践するのが本人達ですから何をかいわんやというところ。いよいよ始まる爆弾の解体。最初に爆弾の装置を見るためにドライバーでふたのねじを回すのですが、そんなところからすでに緊張が漂います。どこにトラップがあるか分からないため、慎重を期し、ゆっくりと作業を進めていくファロン。ねじ穴にはめたドライバーを回すもきつくて回らず、スパナをあてがい少しずつ力を入れていく。やがてキュッと音がしてねじが緩む。たったひとつのねじを緩めるだけの動作でこの緊張感。そんなファロンの一挙動に信じられないほど身体に力がはいっている自分に気がつきます。ふたを開けるだけで相当な時間を有するそれらの行動は、彼らが行っている作業の危険度も困難度も我々などには想像できないような過酷なものであることを伺わせます。そんな作業を彼らは仕事とし、軽口を叩きながら進行させる姿にプロフェッショナルというものを感じるのです。

 やがて爆弾に開けられた窓から見えるものは、センサーとカウンターとトラップの塊。それらをひとつひとつ通電を調べ、処理していく。映画的に若干の説明が会話にまぎれ込ませてあるとはいえ、ほとんど細かい説明がないまま解体を進めていく状況にやはりリアリティを感じずにはいられません。そんな中、船が揺れたために起こった手順の入れ違いのために、部下のチャーリーは爆死。ファロンは愛弟子の死を悲しみ、一時は戦意を喪失しますが、再度解体に挑みます。ふたたびボルテージが上がっていく緊張感。ファロンがチャーリーの爆死した仕掛けに挑むとき、さしもの彼も自分に言い聞かせるのです。「何を恐れることがある?」自分を凌駕しうる顔の見えない敵に対して自信と知識が役に立たないことを理解しながら、それでも逃げ出すことが出来ないファロンとその部下達。そんな彼らが挑む最後の仕掛けは一番奥にあるプレート。それをはがせば奥に時限装置を見ることが出来るはずという状況に到ったファロンが息遣いも荒く、細心の注意を払いそのプレートをはがしていく。そこまでしてたどり着いたファロンの視線の先にあった物は、しかし起爆装置ではなく「残念、この次がんばろう」という紙片に書かれた文字だったという皮肉。ファロンを子供扱いするような虚をつかれた展開に観客は驚きながらもそれ以上に犯人とファロンとの力の差を見せ付けらるのです。

 しかし、ファロンはこの部分からこの爆弾を以前見たことがあること、そしてその仕組みを理解するとともに、爆弾を作った犯人も推察します。犯人を特定するきっかけが爆弾を作った人間の技術的な癖であることなど、最後までそのプロフェッショナル性に驚きます。そして、爆弾の側面から姿を現す本当の起爆装置。それが冒頭に書いた赤と青の線なのです。

 映画を再見するとき、はじめてみた時のその圧倒的な緊迫感をいつも思い出します。ひとつの動作ごとに心臓がはねるような緊張の連続は、圧迫感さえ感じます。また、BGMが極端に少ないことも記憶に残っています。音楽に頼らず、逆にその息使いや部品や機械の僅かな音でテンポを作り、緊張感を煽ります。そしてラストで下されるタイムリミットギリギリでの最後の決断。数多くの亜流を生み出した本作ですが、純粋に観客の立場だけではない映像作品を作ることを生業にしている人達にとっては、その緊張感を体感してしまった以上、それをこれから作る自分達の作品たちに再現させずにはいられなかったのかもしれません。

 このシチュエーションはいろいろな状況や展開に使いまわされ派生していくうち、爆弾の解体のサスペンスより、最後の赤か青かを選択する部分の方がメインとなり、どうしてそれを切るのかの理由付けの部分にオチを持ってくるようになっていきました。本作では犯人であるジャガー・ノートの言葉の裏を読むという形でしたが、その作品ごとに例えば占いでのラッキーカラーだったり、その色にまつわるものに思い入れがあったりと何かと苦労していた感じも見受けられます。そんなたくさんの作品のなかで96年のアニメ映画「名探偵コナン 時計じかけの摩天楼」では、あっと驚く逆転の発想で他の作品群とは一線を画す映画となっていましたが。

 主演は個人的には「カサンドラ・クロス」(76年/アメリカ)が好きなリチャード・ハリス。妻子が客船に乗り合わせながら冷静に捜査をつづける警察官にレクター博士ことアンソニー・ホプキンス。しかしなによりこの映画で自分に強い印象を残したのが監督をしたリチャード・レスター。この監督はビートルズの映画で有名らしいですが、個人的にはこの監督の映画で一番記憶に残っているのが「スーパーマンⅢ 電子の要塞」。Ⅱまではいかにもと思えるようなアメコミヒーローの正当派映画だったのに、彼はこのパートⅢを”アメコミなんてこんなもの”とばかりの笑える快作にしちゃっています。(Ⅱもレスターが監督でしたが、途中までは1のリチャード・ドナーが演出していたそうです)本作の緊張感溢れる演出と打って変わった作風はイギリス人特有のシニカルさ故なのか。ということは、「ジャガー・ノート」のあの突き放したような空気感も自分の邪推など全く関係なく単純に彼の性格だったのかもしれません。

 

 自分は今回のジャガーノートや新幹線大爆破など爆弾をストーリーのメインに据えた映画が大好きです。下手な銃撃戦ばかりの映画よりもよほど興奮度の高いそんな映画にすぐに喰いついてしまうこともあり、記憶に残る映画もいくつかあります。というわけで次回は「エグゼクティブ・デジション」について描きたいと思います。

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ぬいぐるみと少女

●SCENE-041「新幹線大爆破」

●SCENE-042「ジャガー・ノート」

●SCENE-043「エグゼクティブ・デジション」

●SCENE-044「スピード」

●SCENE-045「交渉人 真下正義」

●SCENE-046「名探偵コナン 時計じかけの摩天楼」

●SCENE-047
「名探偵コナン 揺れる警視庁 1200万人人の人質」

●SCENE-048「セルピコ」

●SCENE-049「フレンチコネクション」

●SCENE-050「LA大捜査線 狼たちの街」

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