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タイトルバック 本家を凌ぐハリウッド映画ばりの痛快作! でも犯人が…。 タイトルバック
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タイトルバック 「交渉人 真下正義」 タイトルバック
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タイトルバック 2011.12.12 タイトルバック
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 人気TVドラマを映画化してびっくりするほどヒットした「踊る大捜査線 THE MOVIE」(98年)と、二匹目のドジョウは鯛だったのか、さらにヒットしてもっとびっくりした二作目「踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」(03年)。金のなる木は離さじとフジテレビは更に2本のスピンオフ映画を作りました。その1本が本編でキャリア組らしからぬ情けなさが印象的な真下正義を主人公に据えた映画「交渉人 真下正義」(05年)です。

 クリスマスイブ。東京で8路線を運行する東京トランスポーテーション・レールウェイ(TTR)で走行中の正体不明の車両が確認される。その車両は「クモ」と呼ばれる開発中の新型だった。同時刻、警視庁に弾丸ライナーと名乗るものから爆弾テロの予告。交渉相手として交渉課準備室真下正義を指名してくる。一方無人で走行するクモにより真下が向かったTTRの地下鉄総合司令所はまさに騒然。ダイヤは乱れ、混乱する乗客乗員。その時、他の全車両の自動運転装置が作動しなくなる。クモと後続車両との追突の危険が及ぶが、寸でのところでクモはそれをあざ笑うかのように去っていく。真下を信用できない総合司令長の片岡はTTR独力で事態を解決しようとするが、神出鬼没のクモを把握することさえできず、地下鉄全線は混乱し、パニックを起こす。そんな時、接触してきた犯人が真下を呼ぶ。

 こんな感じで進行するこの「交渉人 真下正義」を観た時に最初に頭をよぎったのは「新幹線大爆破」と「ジャガーノート」のニコイチだなという単純な考え。ベースをそこに求めていることとオマージュでもあるでしょうか。映画はTTRの総合司令所を舞台のメインとして展開、情報を武器とする交渉課の物語として情報が集約され発信されるこの司令所はふさわしいと思えますが、やはり「新幹線大爆破」の総合司令所とイメージは大きくダブります。さしずめ国村隼演じる片岡指令長は宇津井建が熱演した倉持司令室長でしょうか。コンピュータで表示される運行表示板はCTCの表示板の現代版という感じで、片岡が表示の拡大を指示するシーンなど、ここは倉持が双眼鏡を覗くシーンと同じなのだなとちょっとひたってしまいました。また、「ジャガーノート」の要素は映画のクライマックス、爆弾解体の部分に集約されています。最後に残った7本(!!)のコード、複数の起爆装置に各々配置された爆破物処理班の隊員達。彼らが隊長の手順に従って爆弾を解体していくところなどそっくりです。隊長の「ジャガーノートって映画みたことあるか」って台詞もありましたし。

 ただこの映画相当に面白かったです。一応本筋の「踊る大捜査線」の1&2も観ていましたが、正直その本編よりも面白い。ストーリーは結構複雑、というか煩雑ですが、巻き散らかされたというより高い密度で構成されている感じで、物語は地に足がついた世界観で前述の前半から更に目まぐるしく展開していきます。SAT導入による爆破の危険。片岡が隠す地下鉄の隠された路線。犯人vs真下という単純な構図だけでは収まりきらない危機的状況。その犯人と真下の交渉においても、犯人から断片的に与えられるヒントに真下だけでなく観ているこちらも振り回される中、車両基地が爆破されたり、僅かながら犯人の手掛かりが掴めたりと、物語の展開のスピードは半端ではありません。終盤、真下らに反発していた片岡以下TTR職員達も自分達の職分で事態の収拾を図るべく、警察と協力して最後まで地下鉄で危険にさらされている乗客達の避難を続ける姿に自然と高揚感を覚えるのです。

 正直、主役の真下には主人公としての魅力はあまり感じません。この情けなくみえるキャラクターはいわゆる仮の姿ではなく、どうも本質のようで、しかも演じるユースケ・サンタマリアの演技がそうなのかキャラクターの本気度が掴みかねます。交渉人という役柄のため、劇中演技するシーンもあるのですが、その一本調子の演技は、敵も見方も騙しているのか、ただ大根なのか分からないのです。でもそんなことが些細にも感じるほど寺島進演じるべらんめえ調の木島他、彼の周りのキャラクター達は小気味良い動きを見せてくれます。また「踊る〜」シリーズを連想される伏線やこれもシリーズとして特徴的な日常を連想させるアルアル的な笑えるシーンを緊迫感溢れる展開の中に随所に挿入し、その緩急がとても心地よい感じ。溢れる情報に翻弄されながらも、先へ先へと引っ張られる演出で一気にクライマックスへ。真下が恋人の雪乃と行く予定のボレロのコンサートホールが最終的な爆破目標と分かり、雪乃のもとへ向かう真下と爆破物処理班の爆弾解体のシーン、さらに爆破を阻止するために走る木島とクモの侵入を阻むSATなどが同時進行していくその畳み掛ける演出はハリウッド映画を彷彿とされる垢抜けたものに見え、とても興奮しました。

 観終わった時の満足度はかなりの高さでしたが、はっきり言うと同時に何かわだかまりのようなものが残ったのも事実です。そのすっきりしない原因というのがこの事件の犯人、及びそれにまつわる描写でした。この映画、結局犯人は捕まらないどころか最後までその正体は不明なのです。そして劇中の犯人の犯行手段や行動もまた実はかなり曖昧で説明のつかない部分が相当数あることにも思い当たるのです。

 例えば、犯人は天才的ハッカーらしいですから、コンサートの席を調べたり、無人のクモの操車や侵入不可能なシステムへのハッキングなどは出来るといわれればしょうがないとしても、そのクモに無線で操縦する装置類を取り付けたり、車両基地やコンサートホールにいくつもの爆弾を仕掛けたりという物理的な作業(入手困難な爆薬の類いをこの日本で入手し、爆弾を作り、立ち入りの難しい場所へ相当量になるそれらをもって侵入し、しかも誰にも知られずおそらくは短時間で複数箇所に設置すること)が出来るのか? という至極あたりまえの疑問。

 また時間的な問題もあります。犯人が真下の存在を知ったのが一年前であっても、コンサートホールに爆弾を仕掛ける準備期間はあまり無かったはずです。というのも、イブの日に雪乃に時間を作ってもらったのは真下でしたが、勤務が入っていたのですみれに変わってもらったと雪乃は言っていました。警察官のシフトがどれくらい前に決まるかは知りませんが、何ヶ月も前ということは無いと思います。一般的な仕事なら一月前くらいでしょう。雪乃がコンサートのチケットを取ったのはその後だと思われます。そこから真下と雪乃の行動を調べ、コンサートの場所とその内容にあったオリジナルの爆弾と起爆装置(シンバルの音で起爆する爆弾)を考え、それを組み込んだ今回の計画全般を立案もしくは修正(事前に準備できることもあるでしょうから)、その後前述した不可能ともおもえる物理的な作業をこなし、イブを迎えるのです。

 もしかすると犯人は単独犯ではないのかもしれません。そもそも単独犯というのはプロファイリングの予測であって何かしらの物証があるわけではなく、それぞれ得意な分野を受け持てば犯行はまだ可能かもしれません。そういえば犯人から真下への電話などいくらボイスチェンジャーで声を変えているとはいえかかってくる度に言葉づかいや話し方が違い過ぎました(パンフレットによれば不気味さを表現するために複数のスタッフや水野美紀までが声を当てたという話ではありますが)。でも、これら犯人についての人物像や行動など極端なほど描写されません。本来警察はそういう物理的な行動、作業や物証などから犯人像を絞るのに、この映画ではそこの部分がすっぽり抜けているのです。しかし、監督はそれを凄いスピードと緩急のある演出、そして矢継ぎ早に与える新しい情報で観客を満腹にさせ、結果的に観ているこちら側ににそれらをほとんど感じさせる隙を与えないのです。

 それでも終盤、システムに細工が出来る人間で声紋が一致した容疑者が浮かび上がったのだから、もう納得しようとも思うのですが、今度はその人間がすでに死んでいたという事実。実際に真下と会話をしている以上録音とは考えられず、ラストで犯人の車が爆発して生死は不明。いよいよ犯人の正体は全く分からないことに。正直本気で不安でした。脚本家や監督は犯人を本当に幽霊の仕業にしようとしているのではないかと。そんなことをすれば何でもアリの状態になり、世界観は根底から崩れるのに。ただ、もしかして…と思い当たることもあるのです。もし、この映画の犯人像が”存在しない者”というイメージが前提でつくられたのだとしたら。映画「機動警察パトレイバー The Movie」(89年)の帆場のように。

 おもえば本家の「踊る大捜査線」シリーズは「パトレイバー」シリーズの影響を強く受けていました。そんな本家からのスピンオフ映画ですから、劇中にはやはりいくつも思い当たる部分があります。例えば独立しているはずの運行制御システムに侵入した方法がシステムのソフト開発を担当した業者の人間が10年前に時限式のプログラムを仕掛けていたというくだりは、「パトレイバー2 The Movie」の航空自衛隊の防空システムの2年前の改修工事の際、業者にまぎれてシステムに穴を作っていたというシーンを思い出します。またクライマックスでSATが銃撃で暴走中のクモを停止させるシーン、停止するとともに車体の中央にある赤い表示灯の光が徐々に落ち、コンピュータの画面にはSTOPの文字が映し出されるという見せ方は、「パトレイバー The Movie」のやはりクライマックス、暴走する新型パトレイバー「零式」が主人公の野明の銃撃により起動を停止、額の赤いセンサーが灯りを落し、モニターにシステムエラーが表示される場面とそっくりです。「これが最後です」などいくつものセリフもまたパトレイバーシリーズを彷彿とさせますし、象徴的にスクリーンの中を飛び回るカラスだけでも押井調を感じてしまいます。ですから、劇中のまるでこの世に存在しないかのような犯人の描写もまた、「パトレイバー The Movie」のもういない犯人である帆場英一とダブってしまうのです。(容疑者の名前も帆場英一と羽田裕一って音が微妙に似ていますし)

 映画パトレーバーは犯人の帆場が自殺するところから幕を開けます。事件は帆場が死んだ後に起こるのです。だからいくら警察が事件を追っても絶対に犯人は捕まえられない。そんな永遠に手の届かない犯人像にしたいとスタッフは最初に考えたのだとしたら、それまでハッカーとしてデジタル的に犯行を進めていた弾丸ライナーが最後に爆弾が起爆するためのトリガーをオーケストラの”シンバルの音”というアナログ的なものに設定するという手口も、やはり帆場が自身の作ったプログラムを社会システムに潜伏させながら最後の引き金を”台風”という自然現象にしたのと同じに思えるのです。

 これらは多分オマージュであり、リスペクトでもあるのでしょう。そしてサービスでもあるかもしれません。でもこと犯人の描写に関してはいろいろと散りばめすぎて統一性が無いような気がします。先ほどの犯行手口にしてもなぜわざわざ起爆装置にオシロスコープを使用して、シンバルの音を引き金に選んだのか? 最初に地下鉄を暴走させる手口との関係性もほとんど無く、最後のクモから信号を発信させるというのも取ってつけたように思えます。犯人像がもっと明確なら犯行手口や犯行動機などその犯人に起因させて考え納得することも出来ますが、ここまで正体不明な犯人では、それをテーマ性や含みに求めることしかできず、しかしそうしてしまうと逆にその脈略の無さばかり見えてしまうのです。

 パトレイバーの帆場の目的は、未来へ発展しつづけながらもそれ以上に多くのものを忘れ、無くし、空虚化していく東京という街への反抗心であり、それゆえの破壊衝動による犯行だったのではないかと思っています。だからこその”台風”だったはずです。全てのお膳立てはしながらも原因と結果だけをつなげるなら”台風で破壊される東京”というまるで天の配剤のごとく。たったひとつのプログラムからそんな神の怒りを呼び寄せたとおもわせる犯行手口までみせた帆場に対して、あまりに色々やりすぎて一貫性を保てないこちらの犯人は、劇中遊んでいるだけといわれているそのままの本質しかもたない、なんとも魅力を感じられない敵として描かれてしまっているのです。だからこそもっとしっかりした犯人像があれば、観終わっても高揚感の続く本当に面白い映画になったはずのに…。

 ほんとはこの映画もっとおかしなところはいっぱいあるんです。ジャガーノートをそっくり真似た爆弾の解体シーンは、しかしその爆弾は起爆装置のみで結局遠隔地の爆弾へ信号を送る形になっており、その媒体がケイタイというのであれば信号を送らせなければよいだけでコードを切っていく必要などないのでは…とか(しかも解体に失敗しても解体している人間が死ぬ訳ではないので緊張感も薄い)、犯人が車で移動しているならまず駐車場を調べろとか、最後に犯人の車が自爆したとき爆薬もそこに積んでいたはずだから爆発の威力があの程度なのはおかしいとか、まあそんなことを言えばきりがないのでいいのですが、出来ればこういうことを気づかせない映画、もしくは気づいてもどうでも良いと思えるくらいのしっかりしたものが欲しかったです。本当に凄く面白かっただけに惜しい映画でした。

 

 この「交渉人 真下正義」のように「新幹線大爆破」と「ジャガーノート」の良いトコ取りをしたような映画は他にも1本思い当たります。それは本作以上に模倣と見られてもしょうがないほどにその主要要素を取り込みながら、完全にオリジナルとして昇華させたと思えるほど完成度の高い映画でした。とわけで次回は「名探偵コナン 時計じかけの摩天楼」について書きたいと思います。

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ぬいぐるみと少女

●SCENE-041「新幹線大爆破」

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