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タイトルバック 爆弾物の新しい形の種になってほしい作品 タイトルバック
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タイトルバック 「名探偵コナン 揺れる警視庁 1200万人の人質」 タイトルバック
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タイトルバック 2012.02.21 タイトルバック
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 ここ何回が”爆弾もの”の映画について書いてきました。そしてそれらはやはり2本の傑作映画「ジャガーノート」と「新幹線大爆破」から影響を受けているとも書きました(あくまで個人主観)。実際、爆弾の仕組みや解体が物語の大きな鍵になる物語は他の作品を見ても未だにそう感じてしまいます。ですから本当は、これまで観たことのない全く新しいアイディアの爆弾ものが観てみたいと思っていたりするのですが、実は無いことも無いのです。成熟させれば新しい爆弾ものの形になってもいいと思えるような爆弾のアイディアを持った物語が。というわけで今回はTVアニメ「名探偵コナンスペシャル 揺れる警視庁 1200万人の人質」(03年)について書きたいと思います。

 3年前、奇妙な爆破の予告状を送りつけてきた爆弾犯を追っていたのは、かつてその男に親友を殺された元爆破物処理班の松田刑事。しかし彼は多くの人命を救うために自ら犠牲となり爆死する。そしてそれから3年後、かつての松田刑事に想いを馳せる佐藤刑事のもとに、またしても同じ爆弾犯からあの日と同じような予告状が届く。最初の被害者である白鳥警部は車を爆破され重傷。3年前の憎しみと怒りを再燃させる佐藤刑事と、今度は逃がすまいと捜査に全力を注ぐ警視庁の警察官達。しかし、偽の爆弾に振り回され、予告状の本当の意味もわからない。昔の記憶に冷静さを失う佐藤刑事に複雑な思いを感じながらコナンと少年探偵団を連れ立って捜査をしていた高木刑事だが、彼らを帰宅させるための車中で視界に入ったのは東都タワー。それは予告状の文面に合致する建物だった。東都タワーに向かう彼ら。しかしそのまさに目の前でタワーから爆発の煙がのぼる。そしてエレベーターに子供が閉じ込められたとの一報が。救出に向かおうとする高木刑事を必死に止める佐藤刑事。3年前の苦い思いが蘇る…。

 2003年に2時間のスペシャル版として放送された本作。オリジナルではなく、原作をほぼ忠実にアニメ化したものでしたが、原作のこの話が大好きだった自分は放送された作品をしっかり録画して何度も見返したのを覚えています。アニメ化の際、原作が全5話分と長くなく2時間の尺には足りなかったのか、わずかながらアニメオリジナルの描写で肉付けさせていて、例えば原作にはセリフでの説明しかない松田刑事の親友が殺される全ての発端の事件が最初のエピソードとして挿入されるなど、そのほとんどが原作を補完するディティールに回されていたことと、また映像作品としての武器である動きや音楽による高い演出力により、アニメの完成度は結果的に原作以上となっていました。

 そんなこの作品の核となるのが犯人の使用する特殊な爆弾。犯人はその爆弾を使い、巧妙な手口と連動させて犯行を企てます。その犯人の手口ですが、まず犯人は警察に予告状を出し、その中で爆弾をどこか2箇所に仕掛けたことを暗示させます。そのうち最初の1箇所はヒントから読み取ることも可能なため、まずそちらに警察をおびき寄せるのです(ヒントで分からなくても小規模な爆発で警察を呼ぶということも考えていたようです)。爆弾は観覧車の中やエレベーターの中といった密閉空間の中に必ず設置されていて、警察官がその中で爆弾を発見すると、近くで監視している犯人はそれと同時に小さな爆弾の爆発でその警察官をその場に閉じ込め、同時に爆弾のタイマーと起爆装置も解除させるのです。その起爆装置は、”水銀レバー”という少しの振動にも反応してスイッチが入るというもので、外からこじ開けようとする等何らかの衝撃を与えても爆発の危険があることから、爆弾の解除は閉じ込められた警察官の手で行わなければいけない状況になるのです。

 しかし実はこの爆弾、素人では無理でも、専門的な教育を受けていれば解体は十分可能な代物なのです。つまりこの密室に閉じ込められた警察官に知識があれば解体できる、そんなちょっと今までの爆弾物とは違う状況ながら、しかし決定的に違う部分がひとつ。それが爆弾を解体中に爆弾中央の液晶パネルに流れるそのメッセージ。わざわざ警察官を閉じ込めるという状況を作り出してまで見せたかったその恐ろしい内容。「勇敢な警察官よ、 君の勇気を称えて褒美を与えよう。 もうひとつのもっと大きな花火の在り処のヒントを。 表示するのは爆発3秒前。 健闘を祈る。」

 犯人が突きつけたのは ”爆弾を解体すれば次の爆破場所のヒントは表示されず、ヒントを得ようとするなら爆弾は解体できない”という状況。つまり、本当に大きな被害をもたらす爆弾を見つけたければ、今、目の前にある爆弾は解体するな、というのです! お前に出来ることは3秒前に流れるヒントを外にいる仲間に知らせることだけなのだと! そしてそれが意味するものは…。一人の警察官に迫られるたったひとつの大きな選択。守るべきものは、”大勢の他人”の命か? それとも”たった一人の自分”の命か? それは犯人の恐ろしいほどの憎悪が強いる究極の選択だったのです。

 今までの爆弾物に登場する爆弾は技術的もしくは状況的に解体出来ない爆弾でした。しかしこの爆弾は人の心に付け込んだ解体させない爆弾なのです。そんな爆弾を使う犯人の目的は金ではなく、かつて自分の仲間を警察に殺されたと思い込んでいる犯人の警察官という人種への復讐です。それを仲間の良心に付け込んだ汚いやり口と考えている犯人は、警察官をあがないがたい状況に追い込んで同じように彼らの義務感に付け込みます。爆弾を解体せずヒントを選べばその警察官を殺すことができ、もし解体してしまえば大勢の人間を見殺しにした警察の大失態として公表し、警察の権威を失墜させる。あまりにも身勝手な動機でありながら、東京都民全体を巻き込むような大犯罪にしてしまった犯人のその憎しみの深さを象徴しているようでもありました。

 ここで思うことを少し。この状況、死への恐怖から目の前の爆弾を解体してしまう可能性が少なからずあると思います。ですが、この場にいるのは一般人ではなく必ず警察官です。そうするともうひとつの命題が頭をもたげます。それは”警察官はどこまで国民に奉仕しなくてはいけないのか”ということ。例え「なにものにもとらわれず、なにものをも恐れず、なにものをも憎まない」と宣誓した警察官であっても、彼らは100%ではない他人の死のために、100%の自分の死を受け入れなければいけないのか? 漫画だからでしょうか? この状況に到った二人の警察官はどちらもそれを黙って受け入れます。松田刑事は口元に笑みを、高木刑事は決意の表情をもって。そこにはやはり警察官への尊敬と憧れを無条件に感じてしまいます。しかしそれと同時に警察官の職務と人格、そして人権の危うさをも感じてしまうのです。

 警察官という存在について、もうひとつ感じるシーンがあります。それがこの物語のラスト。怒りに我を忘れ、無抵抗の犯人を射殺しようとする佐藤刑事に対して、部下の高木刑事がそれを諌めるシーンです。「恐れや憎しみにとらわれずに、いかなる場合も人権を尊重して…」それはいつもは佐藤刑事から言い聞かせられていた警察官の職務に対する心得であり、自分たち警察官としての誇りと使命感を説いたものでした。

 これに限らず、コナンでは警察官の理念や誇りのようなものが語られることがあります。大阪の事件では、高校生探偵の服部が犯人だった警察官に「日本で唯一拳銃所持を認められている警察官としての誇りを忘れたのか!」と詰め寄ります。他の探偵ものではとかく添え物かおまけのように扱われる警察ですが、コナンでの警察官の描き方は比較的リアルで魅力的なキャラクターも多く、その扱いは随分と好意的に思えます。ですから、物語の中で語られる理念などは、もしかすると現実の世の警察官へのメッセージなのかも知れないとも思ったりもするのです。

 それまでとは違う爆弾のアイディアとそれをしっかりと生かしたストーリーやテーマ性に興奮した本作。そんなこの物語で一番好きなシーンはエレベーターに閉じ込められたコナンと高木刑事の場面。より多くの人を助けるために自分たちの命ではなく犯人からのヒントを求めた高木刑事とコナンの二人。爆発まで残り僅かな時間の中、高木刑事が聞かずにはいられなかったのは、これまでの思いも含めた最後の疑問でした。「君はいったい何者なんだい?」それに対してコナンはこう答えるのです。「ああ…、知りたいのなら教えてあげるよ。あの世でね…。」どうなるのかと予測がつかない緊迫感に満ちた状況でのなにか浮世離れしたこの会話。そしてこのコナンのセリフ。主人公が死ぬはずがないと思いつつ、また助かるから正体を言わずはぐらかしているのだとも考えながら、それでもまるでコナンもまた死を覚悟したような含みを感じるこのセリフに、忘れることの出来ない何か重たいものを感じてしまいました。

 ただ最初に書いたように、もう少し…という部分も多いのも残念ながら確かです。例えばヒントの途中でコードを切ってしまっても爆弾は大丈夫だったり、残り3秒でヒントをみてそれを携帯のメールで送るというのはさすがに無理があったり、犯人の予告状が不必要なほど難解だったり、犯人のキャラクターが物語を引っ張るほどに強く無かったりと色々です。3年間の空白、その間ただカウントダウンをFAXで送りつけるという部分も意味があるのか気になります。しかし、物語の概要だけなら”7年間にもわたる警察と爆弾犯との攻防”という実に興奮してしまうストーリー。そして”目の前で殉職した仲間から届く命を賭した最後のメール”という胸がつまるようなシチュエーション。爆弾の構造の精度を上げて、犯人像を掘り下げ、コナンであることも忘れて、ヒントなど子供的要素も練り直せば、相当に緊迫感のある興奮度の高い、しかも感動できるサスペンスアクション映画になると思うのですが。

 最後に「名探偵コナン」という作品について少し。原作がはじまった頃は正直対象年齢の低い事件やエピソードが多かったコナンですが、身体が縮むという巨大な嘘による世界観の崩壊を防ぐ為か、シビアな世界観を徐々に構築しながら、事件もリアル化、複雑化し、同時に破格のバラエティの豊かさを見せるようになります。

 そんな中で描かれたひとつのストーリーの中でコナンが言ったセリフは、自分にとってはあまりに衝撃的で、それまでなんとなく読んでいたコナンという漫画が大好きになったきっかけのセリフでもありました。それが財閥会長秘書が犯人だった事件で最後に自殺しようした犯人をコナンが防いだ場面での有名なセリフ。死なせてと泣き叫びながら連行される犯人を見送りながら盟友の服部がコナンに言います。「あのまま死なせてやった方ががよかったんじゃないのか?」と。それに対してコナンはこう言い切るのです。「バーロ…、犯人を推理で追い詰めて、みすみす自殺させちまう探偵は、殺人者とかわんねーよ…」

 凄い。凄すぎる。驚きました。こんなことを言うなんて。これがコナン=工藤新一のポリシーだったんだと初めて知りました。なるほど思い返すと確かにコナンが解決していた事件の犯人はそのほとんどが逮捕されていて、死んでいたと思っていた犯人のイメージも、黒の組織の残虐性に引っ張られたものだったのだと思い直しました。それにしても凄いこのセリフ。自分にはコナンはこういっているように思えたのです。「あの昭和の名探偵の金田一耕助も、その孫と称する金田一少年も、平成の名探偵の浅見光彦も、あいつらただの人殺しだ!」と。確かに金田一耕助はよく「しまった!」とか言って犯人を死なせていました。その孫も祖父の失敗からは何も学ばなかったのか、これまた何度も犯人を死なせてしまいます。浅見光彦に到っては犯人に自殺を”お願い”するのです。浅見光彦は大好きでしたが、彼が真犯人に自殺を勧める(というかもはや脅迫に近い)ラストはいつも何か釈然としなかったので、このコナンのセリフには大いに溜飲を下げました。後に原作者が「とくに深い意味はなかった」といっていましたが、相当な覚悟が無ければいえないセリフだと自分は今でも思っています。

 そんなコナンですが、しかし直後に悲しい表情をするのはかつての記憶を蘇らせたからです。「完璧な人間なんていない」そういうコナン自身も実は過去に一人死なせてしまったことを思い出し…。見ているこちら側にはいくつもある事件のひとつだと思っていたものが、実はコナンにとっては忘れることの出来ない重要な事件だった、それがピアノソナタ「月光」にまつわる事件でした。でもこのとき自分もその事件の違和感を思い出し、そして同時に納得もしたのです。この事件ではラストで家に火を放って焼身自殺しようとした犯人を助けるために、近づくことも難しい業火の中にコナンは単身飛び込みます。結果的にコナンは犯人に窓から外に放り投げられ助けられるのですが、そうでなければ死んでいたかも知れないあの状況。殺人犯を助けるためになぜそこまで? そんな疑問にもきちんとした解答があったのだと改めてこの作品の完成度の高さを感じました。

 

 「なにものにもとらわれず…」確かこれから警察官になる生徒達が警察学校で宣誓する文言。本作の劇中にあるわけではないですが、こんな言葉を思い出してしまうほどこの作品は”警察官”という特別な職種を意識してしまうような側面を持っていました。そしてこの言葉を思い出すと、同じような言葉に理想を抱いて警察学校を卒業し、刑事になった男の物語を一緒に思い出してしまいます。しかし、実際に警察官となった男にとって目の前に現れた現実は、自分の思いとはかけ離れたものでした。次回はそんな男が警察官として挑んだ現実との孤独な戦いを描いた映画「セルピコ」について書きたいと思います。

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